SSブログ

妻の回想~その3~「あの頃に帰りたい…。」

前回の続き…。

 

妻の気持ちからすれば、望まぬ病に冒され否が応でも

自分の死を意識させられるし、現代人の2人に1人は

がんになり、3人に1人はがんで命を落とす時代である。

でも、不幸にしてがんで、亡くなられる人のすべてが

「自分自身の死」というものを受容して旅立っていく

ワケではない。大半の人の場合激しく心を打ちひしがれ、

心の葛藤に苛まれるのが普通だと思う。我が家でも

御多分に漏れず、妻が当初今も時折あるけど。)

「なんで、アタシがこんな病気にならんとイカンとね~!!」

大声でわめきながら私の身体をサンドバッグ並みに

メッタ打ちにする場面も。

(…。結構な力で、顔叩かれたら目から火花出たぞ…。)

そうかと思えば、逆に、どど~んと地獄の底まで沈み込んで、

消え入りそうな声で「アタシが居なくなったら、

子供たちはどうなると…。」なんてコトを言ったりする。

「蜘蛛の糸」(芥川龍之介作)にある、生前に蜘蛛の命を

助けたが、地獄に落ちた”カンダタ”を救うべく、

地獄の底に垂れてきた、一筋の蜘蛛の糸…。ただ~し!

後をついてくる人々に向かって、間違っても、

「オマエたちは降りろ」なんてコトを言ってはオシマイである。

当然、プッツリと糸が切れて落っこちて、元の木阿弥

となってしまうんである。この場合のあたくしの存在価値とは

何なんだい…?とかなんとか思ったりするのだけど…。

すかさず私が「だからこそ、君が生きとかんとイカンやろ!」

といって生き続けるモチベーションを絶やさないように

しなくてはならない。…っていうコトは、あたくしがなんでも

ソツなくこなす才人であってはならず、あたくしのように、

あっちこっちでヌケたコトをする人間の方が都合がいい

ワケである(笑)。一昨日、お得先からのデンワで、

新聞の購読を解除したいとのお問い合わせがあり、

伝えられたデンワ番号にダイヤルすると、契約者様の娘様に

繋がった。私は、恐る恐る「お世話になっております。あのぉ…。

私どもに、何か至らぬコトなどございましたでしょうか?」と、

訊ねると、娘様「いえ…。契約者の父が亡くなりまして…。」

とのコト。「え”~っ、私ついこないだまでお父様とフツーに

会話をしてたんですけど…。」と、答えると娘様曰く、

forest1.jpg?※画像http://www.wallpaper-box.com/forest/1024768/より引用

急性心不全で、何の前兆もなく、亡くなられたのだそうで、

ご家族の方が一番ショックなのだという事実であった。

心の準備も何もない…。でも娘様とハナシをしてて、

気丈な方なのだなと敬服した…。もしも自分が

そういう状況に置かれたとしたら、そんな冷静な態度を

取れるだろうかね…と。

※関連記事

妻の回想。「子育ては楽しかった…。」

http://kiichan2-tabiji.blog.so-net.ne.jp/2016-05-11

妻の回想~その2~「あの頃に帰りたい…。」

http://kiichan2-tabiji.blog.so-net.ne.jp/2016-05-19


妻の回想~その4~「あの頃に戻りたい…。」

http://kiichan2-tabiji.blog.so-net.ne.jp/2016-05-22

次回に続く…。


nice!(17)  コメント(0)  トラックバック(3) 
共通テーマ:日記・雑感

妻の回想~その2~「あの頃に帰りたい…。」

2年前…。たった2年前まで、妻は元気でフツーに

働いていたのである…。一昨年の夏休みが終わる頃、

コトの始まりは、トイレに行ってもやたらと時間が掛かるから、

おかしいな…。という思いは本人にもあったのだけど、

勤務先の上司から、病院で検査を薦められて受診したが、

そこで妻の「直腸がん」が発覚する。その時から

我が家の生活環境は激変した…。私が言うのもなんだけど、

妻は母からもらった健康で丈夫な身体を自慢していた。

その彼女がまさか…。と私もその現実をどうにも

受け入れられなかったのである。

私は勤務先の業務の時間中、

彼女からの件の直腸がんの診断結果の報せを受けた。

そのときの心境はまさに、「なにが起こったのか分からない。」

っていうカンジだったのだから…。数分間のコトだったと思ったの

だけど、固まって動けなかった。その後、入院、手術を経て、

直腸がん原発巣の摘出を終えたのだけど、他の部位(肝臓)に

転移が見られて再度の手術を受けるコトとなる。以来、

今年の初め位まで抗がん剤による治療を行っていた。しかし、

打つたびに本人の体調が著しく悪化するため、私が、

「(抗がん剤は)しばらく休んだら?」と薦めた。義父はその間

「抗がん剤を打たないなら、フコイダンを飲みなさい。」と薦めるも、

効用を彼女が信じなくて、飲用をしないので、中途半端で止めてしまい、

「なら、ホントに知らんぞ…。」というコトになる。

実のトコロ、彼女にはヘルニアの気もあり、

がんに関しても、遺伝的な要素もある様子らしい…。

 

今日、妻が5日間の放射線治療を終えた。この後しばらくは

放射線の効果が続くという事らしい。体の痛みの

原因であるが、がんの転移巣が脊椎にあり、それが

神経を圧迫しているため、背中や腕なんかが痛くなる

ようなのである。お薬を何度も処方しなおしてもらっても、

一向に痛みが治まらない。終いには医師をつかまえて

「笹」だの竹」だのと言っている…。それをいうなら

 「ヤブ」でしょうが(笑)!

緩和ケアの先生に、

涙ながらにぽつりぽつりと話す妻の姿が痛々しい…。

「あの頃に、帰りたい…。」という妻のひと言が私の心を刺す。

「あの頃っていつのコト?」って訊くと、私がお店をやっていて、

また自分も健康だった頃にである…。もう、どうやっても、

戻るコトなど出来ないのであるが…。

その気持ちは痛いほど分かる。そりゃそうである。

誰も望んでがんになどなるワケではないのだからね…。

普段はノーテンキな私も、このときばかりはネガティブ思考、

自己否定の念にどっぷりと浸かってしまっていた…。

※関連記事

妻の回想。「子育ては楽しかった…。」

http://kiichan2-tabiji.blog.so-net.ne.jp/2016-05-11

妻の回想~その3~「あの頃に帰りたい…。」

http://kiichan2-tabiji.blog.so-net.ne.jp/2016-05-20

妻の回想~その4~「あの頃に戻りたい…。」

http://kiichan2-tabiji.blog.so-net.ne.jp/2016-05-22

次回に続く。 

 

 
nice!(27)  コメント(4)  トラックバック(3) 
共通テーマ:日記・雑感

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。